1日目


はじめに : ・本シナリオは4月1日限定公開の「あトの祀リ」(新旧問わず)通過PC限定エイプリルフールシナリオ(KPレス)です。ロストしていても生還していても通過できます。
・あトの祀リ本編のネタバレが含まれます。現行、未通過の閲覧/プレイは非推奨です。
・本シナリオでロストすることは絶対にありませんが、後には何も残りません。ここで起こることは全て本編には関係のないことです。
・一本道の読み物です

※KPレスですがKPを立てて回ることも可能です。プレイ人数は一人を想定していますが、複数人に改変して回っても問題ありません。
(このKPレス部屋をそのまま回す際に使って頂いても構いませんが、KPあり版はご用意できなかったので このまま使って頂くか、ご自分で用意して頂けると幸いです)

※部屋素材の無断転載や他シナリオへの使用、AI学習は禁止です。

現在の画面(シーン:はじめに)はスクリーンショットしても大丈夫です。卓報告の際にご利用ください。
次のシーンから本編が始まります。
   : 卒業か...
   : 卒業できるってことはそもそも、蛙徒ではないんだよね。
兄も無事で...
その場合の静陸ってどんな少年になっているんだろ?
   : 本編より素直でやわらかい…んだろうか
   : んん、考えながらやっていくか
導入 : 遣らずの雨が桜を流す。
今日はあなた方高等部三年生の卒業式だ。
高校生活最後の春、あなたはもうどこへでも行ける。

───祭りの後は、いつも寂しい。

HO無:あなたは蛙徒の村と呼ばれる小さな村で過ごす高校生だ。
今日、卒業式を迎える。ただ、それだけ。

事前情報
G県にあるこの村は山奥にあり、周囲は深い森と霧に囲まれているため外に出ることは難しいが、高等部を卒業すれば就労や大学への進学のために村の外に出てしまう子供も居ることだろう。古い信仰の名残である形式だけのお祭りやすっかり廃れた神殿がある以外に変わったところのない、のどかなところだ。
今日はあなた方高等部三年生の卒業式だ。


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   : あなたはもうどこへでも行ける。

どこにでも行けます。
   : 古い信仰の名残である形式だけのお祭りやすっかり廃れた神殿がある以外に変わったところのない、のどかなところ
   : 後ろ暗い因習はないふつうの過疎集落
   : 本編だとまぁ廃れてはないもんね...
1 : 卒業式当日。
目が覚めれば、薄い窓の向こうから早朝にも関わらずにぎやかな人々の声が聞こえる。卒業生を子に持つ親以外に関係なさそうな行事ではあるが、娯楽に飢えたこの村においては、村の宝である子供達の門出は十分な大イベントだ。そのため、村総出で卒業式を祝うために、この早朝から大人達が子供達本人よりも張り切って準備をしているのだ。
目覚めたあなたを、家族が朝食の席で待っている。あなたの成長をどこか惜しむような、寂しがるような、しかし誇らしげな顔をして。

朝食を食べ、身支度を整えたあなたは家族に見送られて家を出る。とはいえ、後ほど式で会うことになるのだが。

家を出れば、今日は生憎の雨。
折角咲いた桜も、雨に打たれて下を向いている。少しだけ気分は落ち込むかもしれない。
しかし、今日という日は二度とやって来ない。あなたは傘をさして、あるいは雨合羽を着て歩き出す。今日は少し遠回りをして、村を一周してから学校に行こう。そんなことを考えながら。
静陸 洋海 : 1d100 都会に行きたい気持ち
(1D100) > 5
   : カイム...!? 蛙徒という役割に縛られてなければ、元から自由があるなら、そもそも外に出たいとかあまり思わないってこと...
静陸 洋海 : 1d100 歴史や民俗学への興味
(1D100) > 10
   : わ...
   : そう...
   : 村を出て人文の道に進むのってあトを通過した静陸洋海だけってことか~~
静陸 洋海 : 1d100 勉強はしたい
(1D100) > 27
   : ことごとくやる気がないな...?
静陸 洋海 : choice 将来についてあんまり考えてない ここに骨を埋めたいので 鳴海先生と一緒にいられれば...
(choice 将来についてあんまり考えてない ここに骨を埋めたいので 鳴海先生と一緒にいられれば...) > 将来についてあんまり考えてない
   : 解釈
静陸 洋海 : 父さんも母さんも大げさだよ。俺、別に村を出ていこうなんて思ってないんだから。
静陸 洋海 : 今日という日はもう二度とこない、か。大人ってよくそう言うよな。
二度と戻れない日がたくさんあるからなのか。
静陸 洋海 : こんな日だからか、雨が降っているからか、なんだかアンニュイな感じになっちゃうな。
外回りでゆっくり行こう。
静陸 洋海 : choice 雨合羽 雨傘
(choice 雨合羽 雨傘) > 雨傘
2 : ▼聞き耳
静陸 洋海 : CCB<=50 聞き耳
(1D100<=50) > 27 > 成功
2-1 : 遠くから「おーい!」という声が聞こえる。段々こちらに近付いて来ているようだ……。
静陸 洋海 : あれは…
3 : 「おはよ!」
「なんだか落ち着かなくて迎えに来ちゃった、ね、今日は一緒に学校行かない?」
「せっかく最後だし……」

声をかけられ、そちらを見ればあなたの幼馴染の勝が居た。
良くは知らないが、彼は村の冠婚葬祭を担う柳田家の一人息子だ。幼少期からあなたを含む同年代の子供達の後ろをついて回っていたが、それは大きくなっても変わらない。
勝はにこにこと嬉しそうに、傘を持っていない方の手であなたの手を握る。
さすがにこの歳になって手を握って仲良く登校などと、少し気恥ずかしさがあるかもしれないが。あなたが不満を言う前に手を引っ張られ、握った手と手が雨に濡れる。

そんな様子のあなた達へ、近くを通りかかった村人たちが「転ばないようにな」と、微笑ましそうな目線を送っていた。
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静陸 洋海 : 1d100 満更でも
(1D100) > 58
静陸 洋海 : 「あ、おはよ、勝。
 いいけど、って、そんなに引っ張るなってば」
別にさほどまんざらでもなさそうだ。
静陸 洋海 : でかくなったけど、今でも俺たちのあとをついてくるの、弟分みたいでかわいいよな。
ほんとはジュンに一番懐いてるんだけど、あいつ照れ臭いのかちょっと素っ気ないんだよな。素直になればいいのに。
4 : ヒキガエルのような頭と、コウモリのような耳を持ち、石で出来た玉座にけだるげに座っている肥えた中年、あるいは巨大に肥大した赤子のような体型の像が鎮座している。これがいわゆる、遥か昔にこの村で信仰されていた槌蛙様の姿とされている。
ぽつん、と村の中央付近に建てられているこの像は信心深い老人が手を合わせたり、さすったりしているのをよく見かけることだろう。
今は村人達に花飾りをつけられ、随分陽気な様子になっている。

勝は像の前に行くと少しだけ悪戯っぽく笑った。
「知ってる?この像の足の裏を撫でると……好きなひとと両想いになれるのだって」
「健太さんと洋子さんもここでおまじないをしたのだって……」
「あ、そういえば、洋子さん、今日退院なんだって。さすがに今はまだ面会時間じゃないけど……朝の挨拶くらいなら窓越しにできるかも」
「赤ちゃんにも早く会いたいね」

洋子と健太というのは、あなたの近所に住む夫婦だ。
最近洋子が第二子を出産したため診療所に入院しており、健太や祖父である村長が頻繁に診療所へ見舞いに行っていたのを知っている。
診療所へ向かえば、洋子に朝の挨拶くらいはできるかもしれない。
静陸 洋海 : 「へぇ…お互いに好きあってたのかな。いいね、そういうの」
   : あと本編では自陣以外+女子は苗字呼びだったんだよね...
   : この洋海は普通に下の名前で呼んでそう 距離を置いていない感じ...
静陸 洋海 : 「行きがてら挨拶いこ。会えるの、今から楽しみだね」
5 : ▼アイデア
静陸 洋海 : CCB<=95 アイデア
(1D100<=95) > 74 > 成功
5-1 : 成功→槌蛙様像に何か違和感を覚える。今まで少しも感じたことの無かった、恐怖や嫌悪に似た何か……。
静陸 洋海 : 「…?」不意に、ぞっとしたものを感じて後ずさってしまう。
6 : あなたがどこか上の空でいると、勝が心配そうに顔を覗き込んでくる。
「大丈夫?」

あなたの方を心配そうに見つめ、気遣うようにしながら手を引く。
静陸 洋海 : 「…あ、ううん、大丈夫。気のせい気のせい」
だってこれは、ただの苔むした石像なんだから
静陸 洋海 : 「それより、勝はお願いしたの?恋の成就」
    : もし、あなたが勝におまじないの相手はいるのかと雑談まじりに聞くのであればきっとこう言うだろう。

「内緒!」
 
    : ・・・・・・・・・・・・・・・・・
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7 : 商店街の店にも華やかな飾があちこちに飾られている。
喫茶店アマガエルの店主や、駄菓子屋のおばあちゃんがわざわざ外に出て来て、あなた方を見送ってくれる。
卒業式が終わったら、友達皆で遊びに来るのもいいかもしれない。

勝も同じことを思っていたようで(そもそも、あなたがそう思うかはわからないが…)、「帰りに皆で来ようねっ」と嬉しそうに笑った。
静陸 洋海 : 「そうしよ。卒業したら、みんなそれぞれの進路に進んでくし、そうなったら今みたいに気軽には会えないし」
静陸 洋海 : 「洋介は村を出て医大に行くし、サヤは当然ついてくでしょ。ジュンは教職を目指しているらしいし。本当に落ち着いて話せるの、今日くらいかも」
静陸 洋海 : そう思うと、確かにちょっと寂しいな。
静陸 洋海 : 「じゃあまたね、マスター、おばちゃん。後でみんなと寄るから!」
8 : ▼アイデア
静陸 洋海 : CCB<=95 アイデア
(1D100<=95) > 72 > 成功
8-1 : 成功:一瞬、雨粒に混じってあなたの傍に降り注いだ桜の花びらが、灰のように崩れた…ような気がした。気のせいだろう。

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9 : 診療所の前に行けば、やはり早朝のためか静かだった。患者もまだ眠っている時間だろうか。
ゆっくり眠っているのをわざわざ起こすのは気の毒だ、とあなた方がそのまま通り過ぎようとした時、診療所の玄関が開く。
そこに居たのは健太と、赤子を抱えた洋子だった。
「卒業、おめでとう。本当は式にも行きたかったんだけど…さすがにお医者様に怒られるから、ここでお見送りだけさせてね」
洋子はおくるみに包まれ、すやすやと眠る赤子の顔がこちらに見えるようにして微笑んだ。健太も少し困ったように、心配そうに洋子のほうを見ている。

勝は感激したように、小さく声を漏らした。そしてすぐに慌てたように、しかし生まれたばかりの子供を驚かせないように、洋子たちに診療所の中へ入るように促した。
洋子たちはクスクスと、おかしそうに、くすぐったそうに笑った。

そうしてあなたの傍に戻って来た勝は、またあなたの手をとって先を歩き出す。
静陸 洋海 : 「…かわいかったね、赤ちゃん。
 洋子さんも…元気そうでよかった」

それにすごくほっとした。彼女がひとり、やつれた様子で療養しているような気がして。どうしてそんなことを思ったんだろうな。
10 : 「洋子さんの赤ちゃん、かわいかったね…」
勝はふと、思い出したようにこちらに振り返る。
「…なんか、全然関係ない話になるんだけど…僕、卒業したら村の外の大学に行くんだよね」
「学校の先生になりたくて…あの子が初等部に上がるくらいまでには、先生になって帰って来たいな…って」
「君は卒業の後、どうするんだっけ」
繋いだ手を揺らしながら、少し寂しそうに問いかけてくる。
卒業してしまったら、きっとほとんどの同級生は村を出てしまう。村に残るのは家業を継ぐ長男や長女くらいのものかもしれない。洋子や健太のように自ら村に残ることを決めた者も居るが、それは少数だ。

あなたの未来は希望に満ち溢れている。しかし、それと同じだけの不安もあるかもしれない。
少なくとも、勝はそのようだった。

「…ここを出ても…たまにでいいから会おうね」
「僕は卒業したら、ここに帰ってくるから…君がここに来たら、いつでも会えるよ」
「父さんのことも心配だしね」
静陸 洋海 : そっか。勝も村を出て大学に行くんだ。
俺は…あんまり外の世界に興味が持てない。恐れているわけではなくて…ただ、ここで生きていけるだけでいいと、なんとなく思っているだけ。
静陸 洋海 : 家族にも、せっかくだから上京してみたら、と言われたけど…夢を叶えて海に出て帰ってこない正樹兄みたいになったら、寂しい思いをするんだろうな。
静陸 洋海 : 「もちろん。応援してるよ。みんなの夢も、勝の夢も。
 外は楽しいことも、真新しいこともたくさんあるみたいだけど、ちゃんと帰ってきてよ?」冗談めかして笑った。
11 : ▼目星
静陸 洋海 : CCB<=70 目星
(1D100<=70) > 81 > 失敗
11-2 : 失敗→あなたは何も気付かない。

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12 : 村の中にある小高い山の中に続く石の階段を登った先には、「神殿」と呼ばれている石造りの建造物が見えてくる。一見、石を無骨に積み上げて出来た大きな家のような造りをしており、正面の中央には出入口らしき鉄扉が構えて居た。
そのひときわ目を引く建造物のすぐ横には、山の斜面に直接とりつけられたような鉄扉があり、村人の誰もこの扉が開いたところを見たことがない。…というのが、この村で出回っている噂だった。大人たちが今は使われていない坑道であるとか、そういう風に話しているのを聞いたことがあるかもしれない。
…とはいえ、村の子供にとってはお祭りの日以外には用事のない場所だ。
肝試しには丁度良いが、そんな罰当たりなことをすれば大人達に叱られてしまうだろう。
静陸 洋海 : 子供のころ、ジュンたちと一緒に遊び場にして怒られたことあったっけ。懐かしい。
13 : 門の前には柳田家の現当主にして勝の父、柳田考と村長が居る。彼らは雨宿りしながら談笑していたようで、こちらに気付くと小さく手を振って来る。

勝は「お父さん!」と嬉しそうに手を振り返している。

近付いて挨拶するのであれば、口々に「おめでとう」と祝いの言葉をくれるだろう。

孝は、勝があなたの手をずっと握っているのを見つけて、優しく諫めるような目線を彼の方へ向ける。
「こら、お友達を困らせてはいけませんよ。…いつも勝がお世話になっています」
「小さな時から仲良くしてくれてありがとう…これからも、どうかこの子と友達でいてくださいね」
愛おしそうに目を細める孝の横で、村長も柔らかく微笑んだ。

村長は軽くあなたの背中を押して、
「気を付けていってらっしゃい」
と、送り出す。
静陸 洋海 : 「ふふ。ちょっと照れくさいけど嬉しいですよ。こちらこそ、いつもお世話になってます」
静陸 洋海 : 「村長も。春先とはいえ、雨で体を冷やさないように気をつけて」
静陸 洋海 : 「行ってきます!」
14 : その時、あなたは何故だかこの先に行けばもう二度と彼らと会えないような気がして、一瞬足を止める。
おかしな感覚だった。しかし、一瞬のうちにそんな感覚は忘れ去ってしまう。

あなたがたは学校に向かって歩き出すことだろう。
15 : ▼聞き耳
静陸 洋海 : CCB<=50 聞き耳
(1D100<=50) > 11 > 成功
15-1 : 成功→雨上がりの道路にひしゃげた蛙のような、生臭いにおいがした…ような気がした。
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   : ヒョォォォ...
静陸 洋海 : 「……」すん、と匂いを嗅ぐ。
静陸 洋海 : なんだろ、この匂い。…わからない。でも、嫌な匂いだな
   : 今まで人死にを見たことがないから、潰れた蛙の匂いみたいだって描写されるのかな〜〜 
   : ここで勝っちはしんだんだ...
静陸 洋海 : さっきから、少しずつ…違和感があるような気がする。
…緊張しているのかな、俺。
16 : 学校につくと、すでに何人か校舎に入っていくのが見える。木造の古い造りをしている校舎がいつものようにあなたがたを迎えた。あなたたちが通うこの学校は村に一つしかない学校で、小中高一貫である。当然、村の子供しか通っていないため全て合わせても50数名程度しか生徒は居らず、あなたがたのいる高等部にはあなたたち4人と20名のクラスメイトしか居ない。
そんな校舎の壁面には大弾幕が貼ってあり「高等部三年生の皆さん、卒業おめでとう!いってらっしゃい!」と書かれている。周囲にはかわいらしいカエルのイラストが描かれている。
また、卒業式に向けてか校舎のほうから吹奏楽部の演奏練習が漏れ聞こえているだろう。

勝と共に教室に向かえば、クラスメイト達が明るく挨拶してくれるだろう。
しかし、楽し気な雰囲気の中には寂しさが見え隠れしている。やはり皆、卒業するのは寂しいのだ。
17 : 暫くクラスメイトや勝と雑談をしていると、教室前方の扉から誰かが入ってくる気配がある。癖毛のひどいぼさぼさの頭、少し幼さを残す目を眼鏡越しに覗かせている。彼はあなたがた高等部の担任である臙脂だ。
「ほら、皆さんHRを始めますよ」
彼が教卓につくと生徒たちはそれぞれ席に着き、ほぼ同時に始業のチャイムが鳴る。

学生生活最後のHRである。
静陸 洋海 : 先生だ。

いつも通りの無造作な癖っ毛は、学校の先生らしくないというか、ちゃんとした大人らしくない。でもそれが彼らしさなんだろうと思うと、胸のあたりがあったかくなる。 こんな表現は陳腐な気もするけど、愛おしいって気持ちなのかも。多分。

いつも通り、大きな丸眼鏡越しに目が合うと、微笑み返してくれる。心が満たされる感じ。
それだけじゃなくて、いつからか少し胸が締め付けられるような感覚を覚えるようになっていた。

俺は、先生が好き…なんだと思う。
先生は俺のこと、ひとりの生徒としてしか見ていないだろうけど。
静陸 洋海 : 高校三年生としてのHRは今日で最後。でも先生はずっとここにいるから、卒業したあともいつだって会える。

……そうだよね?
18 : 臙脂は卒業式に関する伝達事項等を簡潔に伝えた後、こちらに向き直る。
その表情はいつも通り穏やかで、優しいものだった。
「今日という日を皆さんと一緒に迎えられたことを、喜ばしく思うと同時に…寂しくも思います」
「私は先生としては本当に頼りなかったかもしれませんが…皆さんの担任になれて、本当によかった」
「良い式にしましょう…でも…」
彼はそこまで言って、堪え切れないといった様子で声をつまらせる。
卒業式はまだ始まっていないにも関わらず、彼は袖で目元を拭いながら肩を震わせていた。生徒のほうはといえば一緒に泣き始める者、あきれたように笑う者…様々であった。
廊下を通りかかった生徒指導の臣雄…通称“まっちゃん先生”は、窓から顔を覗かせて臙脂をからかう。
だが、恐らく大部分の生徒は見逃さなかった。
臙脂をからかう彼もまた、目元が赤かったことを。
静陸 洋海 : choice 泣いちゃう 笑っちゃう
(choice 泣いちゃう 笑っちゃう) > 笑っちゃう
静陸 洋海 : ああ、泣いちゃった。先生って涙もろいんだよね。
大人になっても自分の感情に嘘がつけないところが、一番いとおしいのかも。
そう思いながら先生のことを見て、思わず笑みを浮かべてしまう。
静陸 洋海 : 普段は厳しいまっちゃんも…今日はなんだか涙腺にきているみたい。
みんな、俺たちのこと大事に想ってくれてるんだよね。
霧は深くて家も家電も古くて、外に比べて不便で人も多くない村だけど、俺はここが大好きだな。
19 : ▼目星
静陸 洋海 : CCB<=70 目星
(1D100<=70) > 43 > 成功
19-1 : 成功→臙脂が一瞬だけあなたの方を見て目を見開いたのがわかる。
静陸 洋海 : 「…?」
静陸 洋海 : 俺の顔に何かついていた?いや、何か気がかりなことがあるのかな。
後で話を聞けないかしら。
20 : 卒業式は体育館で行われる。
相変わらず外の雨音が止むことはなかったが、それが気にならない程に会場は厳かな静寂に包まれていた。
一人、また一人と卒業証書を校長から受け取る卒業生たちを、在校生たちは真剣な眼差しで見つめている。

証書を受け取る際、卒業生は親や担任に向かって今までの感謝や未来への抱負などを一言述べることになっている。

恐らくあなたも台本を用意したことだろう。
一体、あなたは何と言うのだろう。

壇上に立ったとき、保護者席にはあなたや同級生の家族、村長や商店街の人々など、あなた方を幼いころから見守って来た大人達が見えた。
皆一様に、愛おしそうにあなたを見つめていたことだけを、覚えている。


そうして式はつつがなく進んだ。
校長や教頭、教師陣からのメッセージ。在校生、卒業生代表の挨拶。そして最後に校歌を歌い、式は締めくくられる。

体育館内に、子供達の合唱が響き渡る。
   : そっか、少人数だとそういうのもあるんだ....!!!!!
静陸 洋海 : 式にお越しのみなさま、今まで私たちのことをずっと見守ってくださり、ありがとうございました。
私と同じく今日卒業される皆の進路が、これからも明るく開かれていること、この村の営みが末長く続いていくことを、このめでたい春の日に願います。

って感じ...?一言ではないかも
21 : ■■に神留坐す 白■の神の命以て
サク■ク■ース ギ■グズ ズスティ■ゼムグニ
禍原に 禊祓ひ給ふ時に 生坐せる
槌蛙大御神
■のおはしますこの村を 果てなく栄えさせ■うと 申す事の由を
■つ神 旧き■ 八百万神等共に
聞食せと 畏み畏みも白す

…校歌は、こんなだったろうか、とあなたはふと思い至る。
口は勝手にそれを口遊む。しかし、その歌詞の内容はどうにも理解できなかった。
   : はえ!?
   : それだめなやつ 何を歌わせて〜〜〜〜〜〜
静陸 洋海 : 「…?」違和感を覚えながらも歌い終わる。
22 : ▼アイデア
静陸 洋海 : CCB<=95 アイデア
(1D100<=95) > 9 > スペシャル
22-1 : 成功→理解してはいけない、考えてはいけない、と思う。
静陸 洋海 : ………
静陸 洋海 : だめだ。
静陸 洋海 : これ以上理解してはいけない。
静陸 洋海 : 一瞬ずきりと頭痛がして、…思考が崩れる。気がつけばパイプ椅子に座っていて、ちょうど卒業式は終わるところだった。
23 : あなた方卒業生は、在校生と保護者に見送られる中体育館を後にする。
結局、式が終わっても雨は止まなかった。
まるでここに押しとどめようとするかのように降り続ける雨は、グラウンドに咲いていた桜の幾分かを流してしまった。

水溜まりに浮かんだ薄紅色の花筏が、雨粒に弄ばれて浮き沈みしている。
そんな様子を見ながら、あなた方は一度教室に戻り、本来はグラウンドで行う予定だった記念撮影などをすることになる。
…はずだったのだが。

担任の臙脂がいつまでたっても帰って来ない。
これでは折角の卒業式が台無しだ。…学生生活最後、そして門出の日に、担任教師が不在では。
静陸 洋海 : 「…先生、どこ行っちゃったんだろ。みんなで集合写真撮るって話してたのに」
静陸 洋海 : 式の前、少し様子がおかしかったんだよな。
あとで話を聞こうとしてたけど…今探しに行った方がいいのかな。
24 : あなたには彼の居場所が手に取るようにわかった。
だからあなたは教室を出て、真っ直ぐに正面玄関から外へ向かった。傘もささずに。
あなたを叱責するように、拒絶するように、雨粒が体を叩く。それでもあなたの歩みが止まることはない。
静陸 洋海 : 探そうと思ったら、考えるまでもなく先生がどこにいるのかわかった。
傘も…いらないと思った。
先生に、会わなくちゃ。
25 : 木の覆い茂る林の中にある墓地だ。中央に大きな石碑が立っており、周囲を囲むように小さな墓石が点在している。石碑は今まで蛙徒(あと)、神子になった者達の名前が掘られており、絶えず花が供えられている…はずだった。
ここにはそのような石碑は存在していない。何故ならこの村にはそのような風習も、神子や蛙従と呼ばれる人々も、“存在しないことにした”からだ。

それはそれとして、あなたの目的の人物は墓地の中央で…そう、丁度、石碑のあった辺りに座り込んでいた。
静陸 洋海 : 「……先生」
静陸 洋海 : 「そんなところにいたら、体が冷えますよ」
26 : 「…もう、十分でしょう」
「あなたの領域に踏み込んでしまったことは謝ります…だから、どうかもう、俺の…あの子達の記憶を…村を…穢すような真似はやめてくれ」

彼…臙脂は憔悴しきったような声で、振り返らないままにあなたに問いかける。

あなたには、彼が何を言っているのか全く分からなかった。

静陸 洋海 : 「…先生?」
静陸 洋海 : 「…何を、言ってるの?先生は何も謝ることなんて、していないでしょ」
静陸 洋海 : 「俺はいつも通りだし、村もいつも通り、穏やかで平和で……変わりなかったよね?」
盆に返らず-1 : あなたには、彼が何を言っているのか全く分からなかった。

何故なら、この状況はあなたの慈悲深い特別の赦しによって作られたものなのだから。
あなたは思い出す。あなたは「ヒプノス」という神が作り出した悪夢だ。全てはこの厚顔無恥な男を懲らしめるために作り出された──…。
目の前の情けない男は、不用意にも眠りの最中にかの神の領域に入り込んでしまったのだ。それが神の怒りを招いてしまった。だから、この男の肉体が目覚めるまで悪夢の中で苦しめることがあなたの役目だ。

…とはいえ、あなたが姿を真似たこの存在の意識も混ざりこんでいる。
どうするかは、あなたの意向に任されている。
静陸 洋海 : ……
静陸 洋海 : ……、あぁ…ほんとうにどこまで分を弁えていないのだろう。
静陸 洋海 : これで手打ちにしてあげようと思ってたのになぁ。どうも人間の尺度は理解できない。
静陸 洋海 : この人が、そうあればよかったと願った景色が、転じてこの人自身の悪夢になるなんて矛盾している。
静陸 洋海 : どこまでも滑稽で哀れな人間だ。
静陸 洋海 : ほんとうに、どこまで……
静陸 洋海 : choice "わがまま"をする 意地悪はできない
(choice "わがまま"をする 意地悪はできない) > 意地悪はできない
静陸 洋海 : ………どこまでも、しょうがない人だな。
盆に返らず-2 : ▼PLへのアナウンス
このシナリオのPCの正体は「眠りの大帝 ヒプノス」(マレウスモンストロルムP240)が作り出した悪夢である。あトの祀リPC本人ではない。
このシナリオの時系列は、「あトの祀リ」が始まる年の春(4月1日)。鳴海開斗は魔術師としての素養か、それ以外の原因かは不明だが、眠っている最中にヒプノスの気を引いてしまう。
かの神の領域である夢の境界に不意に踏み込んでしまった鳴海に対して警告をするために“悪夢”を見せたことからこのシナリオは始まった。このシナリオはヒプノスが見せた悪夢…つまり鳴海にとっての“最悪”の光景を、彼の記憶を読み取って再現したもの。PCや鳴海以外のNPCはその中で鳴海の記憶をトレースして作られた偽物である。悪夢そのものであるあなたは鳴海を懲らしめることが役目だが、トレース元の意識や感情も反映されている状態だ。
なので、あなたの意向次第で鳴海を早めに解放することも、できるだけ長めに苦しめることもできる。
静陸 洋海 : この身の程知らずの魔術師をほんの一夜懲らしめて、身の程を教え込んでやろうと。そう思っていたのだけど。
静陸 洋海 : わたしが模った少年(俺)は、そうしたくないと思っている。
静陸 洋海 : 苦しんでほしくない。安らかにいてほしい。笑っていてほしい。
自分がそこにいなくたって。
静陸 洋海 : 俺は先生が好きだから。
静陸 洋海 : 愛して、いるから。
   : ああ、ようやく予防線を張ることなく口にしたな…愛情の表明を…
静陸 洋海 : 村の在り方を憎みながら、これまでの犠牲をなかったことにして、都合のいい夢を見る自分を許せない。やさしくて、独りよがりで、誠実な人だから。

俺が心を寄せた鳴海開斗という人は、そういう人だから。
静陸 洋海 : 「もういいよ、せんせ……」
「夢の中でも、そうでなくても…俺は先生が…だいじだから……もう苦しまないで」

先生が起きて、この夢から去るまで、雨から庇うように抱きしめた。
盆に返らず-2b : あなたはもう十分に彼は苦しんだと判断したのだろうか?それとも面倒になったのだろうか。
どちらにせよ、目の前の男は安心したようにぬかるんだ地面へと身を伏せた。

遣らずの雨が桜を流す。
志半ばで強引に雨に引きちぎられ、土に犯され汚された花弁たちが、哀れな男の体を受け止めていた。
どれだけ引き留めても意味などないのに、夢の終わる最後まで雨は降り続けていた。

臙脂──…否、鳴海開斗が悪夢から解放されたのは、4月1日が終わる前だった。
エンド② : エンド‐「盆に返らず」

「進む」で真相へ
エンド報告は「盆に返らず/生還」の表記が可能。
(実際本物のPCは関わっていないので生還も何もないのだが)
真相 : このシナリオのPCの正体は「眠りの大帝 ヒプノス」(マレウスモンストロルムP240)が作り出した悪夢である。あトの祀リPC本人ではない。
このシナリオの時系列は、「あトの祀リ」が始まる年の春(4月1日)。鳴海開斗は魔術師としての素養か、それ以外の原因かは不明だが、眠っている最中にヒプノスの気を引いてしまう。
かの神の領域である夢の境界に不意に踏み込んでしまった鳴海に対して警告をするために“悪夢”を見せたことからこのシナリオは始まる。
このシナリオはヒプノスが見せた悪夢…つまり鳴海にとっての“最悪”の光景を、彼の記憶を読み取って再現したもの。PCや鳴海以外のNPCはその中で鳴海の記憶をトレースして作られた偽物である。
シナリオ中降っている雨は、鳴海の悪夢(村の誰もが幸せに生きられた、叶うはずもない世界)を拒絶する意志であり、「夢から醒めたくない」「このまま夢の中に閉じこもってしまいたい」という、相反する欲求や弱さでもある。
エンド「蛙は帰らず」では、ヒプノスの悪夢(PC)が、自身がヒプノスが作り出した悪夢である自覚がない=どれだけ頼んでも理解できないし解放してくれないことを悟り、ヒプノスの気が済むまで付き合おうと諦めた。
エンド「盆に返らず」ではヒプノスの悪夢(PC)の判断によっては早めに夢から解放されるが、そうでない場合はエンド「蛙は帰らず」と同様に4月1日が終わるまで解放されることはない。
どちらにせよ鳴海は4月1日が終わるころには目を醒ます。

このシナリオに参加したPC本人には何の影響もないため、後遺症や生還報酬はない。
…が、PLやKPの意向で「それってあんまりにもこのシナリオ通った意味なくないか?時間返せ」と思う場合は、本物のほうのPCにそれとなく記憶を共有してもいいし、適切なSAN値報酬を自由に設定して与えても良い。
全てはエイプリルフールの嘘なので、自由に遊んでください。
   : ははあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 せんせ...
   : 記憶...もらってこ!!!!!嘘にしないために今日やったんだし...!!!!!!